「セクハラ」と聞くと、男性が女性に対して行う性的な嫌がらせを思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし、近年では「逆セクハラ」と呼ばれる女性が加害者になるケースが増えています。
働きやすい労働環境を目指すうえで、職場でのハラスメント防止は必須です。
この記事では、逆セクハラの意味や定義を解説します。
逆セクハラの具体的な事例や女性が気をつけるポイントも紹介するので、社会人としてきちんと押さえておきましょう。
逆セクハラとは?
逆セクハラとは、女性から男性に対する性的な嫌がらせを指します。
職場での立場的に、女性上司が加害者で、部下の男性側が被害者になるケースが多いです。
近年では女性の管理職が増えたことで男性の立場が弱くなり、逆セクハラが起きやすくなっています。
本来、セクハラという言葉は男女に関わらず成り立ちますが、「セクハラ=男性加害者・女性被害者」という印象が根強いため、女性加害者・男性被害者のケースを「逆セクハラ」と呼ぶようになりました。
「セクハラは女性が被害者」という意識が浸透しているせいで、セクハラ被害を受けた男性が声を上げづらくなっているのが、逆セクハラの大きな問題点といえるでしょう。
職場におけるセクハラの定義
セクハラという言葉を耳にすることはあっても、何かよくわかっていないという人もいるでしょう。
職場におけるセクハラの定義は、男女雇用機会均等法によって3つの要件が定められています。
詳しく解説していきましょう。
職場で発生すること
職場におけるセクハラの1つ目の要件は、職場で発生することです。
職場とは、労働者が職務を遂行する場所を指し、オフィスはもちろん、出張先や取引先の事務所、顧客の自宅なども職場に含まれます。
勤務時間外でも職務の延長であれば職場とみなされるため、懇親会や宴会といったお酒の席で発生した性被害も、職場におけるセクハラに該当する場合があります。
労働者の意に反していること
職場におけるセクハラの2つ目の要件は、労働者の意に反していることです。
労働者とは、正規労働者だけでなく、契約社員やパートタイム労働者など、雇用形態にかかわらず、事業者が雇用しているすべての労働者を指します。
性的な嫌がらせによって、不快な思いをしたり職場環境が害されたりするなど、労働者の意に反した場合はセクハラに該当する可能性が高いでしょう。
性的な言動が行われること
職場におけるセクハラの3つ目の要件は、性的な言動が行われることです。
性的な言動とは、性的な内容の発言や行為を指し、それらは性別や立場に関係なくセクハラとみなされます。
同性に対する性的な言動もセクハラに該当するため、誰もがセクハラの被害者・加害者になり得る可能性があるのです。
セクハラの種類
職場におけるセクハラには、「対価型」と「環境型」の2つの種類があります。
それぞれの特徴をみていきましょう。
対価型セクハラ
対価型セクハラとは、職場での立場を利用したセクハラ行為のことです。
性的な言動を嫌がったり拒否したりした相手に対して、評価を下げる、クビにする、給与を下げるなど、不利益を与えて嫌がらせをする行為を指します。
例えば、「解雇をちらつかせて愛人関係を強要する」「性交渉を条件に内定を約束する」などは、典型的な対価型セクハラといえるでしょう。
環境型セクハラ
環境型セクハラとは、労働環境に悪影響を与えるセクハラ行為のことです。
労働環境が不快なものになったことで、出社できなくなったり能力が発揮できずに業務が滞ったりと、仕事に大きな支障をきたす可能性があります。
例えば、「職場にヌードポスターが貼られていて仕事が手につかない」「上司からのセクハラが怖くて働く意欲が下がった」などが、環境型セクハラに当てはまるでしょう。
職場での逆セクハラ事例
ここでは、職場での逆セクハラの事例を紹介します。
具体的に、どのような行為が逆セクハラになるのかチェックしておきましょう。
プライベートを詮索する
職場で相手のプライベートを詮索する行為は、典型的な逆セクハラといえるでしょう。
「彼女いないの?」「休みの日は何してるの?」など、何気ない発言でも相手に不快な思いをさせてしまう可能性があります。
親しい間柄であったとしても、プライベートに踏み込むのは避けるようにしましょう。
下ネタを言ってくる
男性が女性に下ネタを言うのはセクハラだ、という認識は多くの人が持っているでしょう。
それと同じように、女性が男性に下ネタを言う場合もセクハラになる可能性が高いです。
「男性なら大丈夫だろう」と思っている人もいるかもしれませんが、男女問わず性的な話題を不快に感じる人はいます。
下ネタだけでなく、恋愛に関する質問も逆セクハラと捉えられる可能性があるので注意が必要です。
過剰なボディタッチ
好きでもない相手にべたべたと体を触られたら、誰でも嫌な気持ちになりますよね。
女性から男性への過剰なボディタッチは逆セクハラになる可能性が高いです。
単なるコミュニケーションのつもりでも、相手は不快に感じているケースもあります。
職場では必要のない身体への接触は避けるのが無難です。
露出度が高い服装
胸元がざっくり開いていたり足の露出が激しかったりする露出度が高い服装は男性に喜ばれると思っている女性は多いでしょう。
恋愛のシーンでは当てはまるかもしれませんが、仕事においては目のやり場に困るだけです。
たとえ就業規則で服装の指定が緩かったとしても、社会人として節度のある服装を意識しましょう。
見た目をからかう
「童顔だね」「太った?」など、男性の見た目をからかう行為も逆セクハラの対象です。
たとえ、その場を盛り上げるための冗談だとしても、相手が不快に感じる可能性がある言動は控えましょう。
もしかしたら相手は自分の見た目にコンプレックスを感じているかもしれません。
たとえ親しい間柄でも、人の個性に言及するときは細心の注意を払いましょう。
男性らしさを求める
「男なのに体力ないね」「男らしく堂々としないさいよ」など、男性らしさを求める言動も逆セクハラに該当します。
性別に関する先入観を押し付けられて、不快に感じる人は多いです。
「男性らしさ」や「女性らしさ」といった、性別に関する無意識の固定的な観念をジェンダーバイアスと呼びます。
ジェンダーバイアスを連想させる言動は、セクハラだけでなく人権侵害にあたる可能性もあるので認識を改める必要があるでしょう。
逆セクハラをしないために気をつけるポイント
知らず知らずのうちに逆セクハラの加害者になってしまうケースは少なくありません。
最後に、逆セクハラをしないために気をつけるポイントを紹介するので、きちんと押さえておきましょう。
性別で決めつけない
基本的に男性が女性に対して行ってセクハラになる言動は、女性が男性に対して行ってもセクハラになります。
逆セクハラをしないためには、性別で決めつけないことが重要です。
「女のくせに」「女性らしくしなさい」と言われたら、不快な気持ちになりますよね。
男性も同じように傷つく可能性があるので、「男性だから大丈夫だろう」という考え方は捨てた方がいいでしょう。
男女で態度を変えない
逆セクハラをしないためには男女で態度を変えないこともポイントです。
「男だから大丈夫でしょ」と男性社員に厳しく当たる行為は逆セクハラに該当します。
また、職場に恋愛感情を持ち込んで、イケメンやお気に入りの男性社員を特別扱いするのも逆セクハラです。
人間関係を円滑に維持するためにも、男女平等に接することを意識しましょう。
職場での自分の影響力を考える
職場でセクハラが起こる背景には、上司と部下、正社員と派遣社員のような力関係の差があります。
逆セクハラを防ぐためには、職場での自分の影響力を考えることが大切です。
相手が性的な言動を嫌がっていないように見えても、実は「評価が下がることを恐れて我慢している」という可能性も考えられます。
職場での立場の違いがあったとしても、人として対等に接する意識を持ちましょう。
悪気がなく逆セクハラしてる可能性もある
職場におけるセクハラは多くの人が意識している問題です。
しかし、「セクハラは男性が加害者」という先入観のせいで、女性から男性に対する逆セクハラは軽視されがちな傾向にあります。
悪気なく逆セクハラをしている可能性もあるので、これまで以上にセクハラに対する意識を高めることが求められます。
人を不快にさせないために普段の言動を見つめ直したり、「男だから」という性別による決めつけを改めたりして、働きやすい職場環境を目指すことが大切になってくるでしょう。